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東京銀座の産業医事務所 セントラルメディカルサポート

Column記事

2014.07.28

ストレスチェックとうつ病 〜スクリーニングの限界について〜

来年から企業でのストレスチェックが義務化されますが、この制度はそもそも何を目的として行うものでしょうか?
厚生労働省は「従業員自身が心身の健康状態を自覚する一助として活用してほしい」というスタンスで、主にセルフケアによる一次予防を重視しています。一方で、「うつ病等のメンタル疾患をスクリーニングすることで二次予防にも役立つ」という意見も一部にありますが、ストレスチェックでメンタル疾患をスクリーニングすることはできるのでしょうか?

結論からいうと、健常者の多い集団でメンタル疾患のスクリーニングを行うことは、病気でない人にまで患者のレッテルを貼ってしまう危険が高く適切ではありません。この点については専門家の間でも誤解があるところなので、今回はその理由について少し詳しくご説明したいと思います。

一般的に、どのような検査であっても100%の確率で疾患と健常を区別するのは困難であり、一部に偽陽性(病気ではないのに病気と判断されてしまうこと)や偽陰性(病気なのに病気ではないと判断されてしまうこと)が混ざってしまいます。
感度(「病気の人」を「病気である」と判断できる確率)や特異度(「病気でない人」を「病気でない」と判断できる確率)が高いほど、偽陽性や偽陰性が減ることになり、優れた検査ということになりますが、感度と特異度にはトレードオフの関係があり、両者を100%にすることは不可能です。

例えばうつ病の診断の場合、優れた質問紙であっても感度90%、特異度80%程度といわれています。この質問紙を用いて5%の人がうつ病である従業員1000人の会社でスクリーニングを行った場合、どのような結果になるでしょうか?

まず、50人のうつ病患者のうち、45人がうつ病と判定され、5人が健常と判定されます(感度90%)。次に950人の健常者のうち、190人がうつ病と判定され、760人が健常と判定されます(特異度80%)。つまり、うつ病と判定される人は計235人になりますが、そのうち本当にうつ病である人は2割程度(45/45+190)しかいないわけです。

詳しい説明は省略しますが、患者が少ない集団でスクリーニング検査を行うと、陽性的中率(陽性と判断された人のうち、本当に陽性の所見を持つ人の割合)が非常に小さくなります。「ストレスチェックの得点が高いこと」と「病気であること」が一致するわけではないという事実について、特に人事担当者の方々は是非ご理解いただき、ストレスチェックの有効活用につなげて下さい。

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