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東京銀座の産業医事務所 セントラルメディカルサポート

Column記事

2018.02.15

(記事紹介)労働時間と幸福度の関係

2018年2月9日 毎日新聞「残業60時間以上、健康リスク高くても幸福度は上昇」

人材サービスのパーソル総合研究所と中原淳東京大准教授(人材開発)が共同で行った残業実態調査で、残業時間が60時間を超えると健康リスクは高まるのに幸福度は上昇することが分かった。幸福度は残業時間が長くなると少しずつ下がるが、60時間を超えると跳ね上がる。会社への満足度や仕事への意欲も同様に60時間を超えると上がったという。
(中略)中原准教授は「幸福度や満足度、意欲は高いのに、ストレスは高く、休みたい、眠りたいと感じている。意識や行動の不整合が起こっていて、正常な判断ができない状態なのではないか」と分析する。自覚症状がないまま、病気や休職につながるリスクがあるという。
(中略)中原准教授は「もう少し分析が必要だが、残業60時間以上の人はランナーズハイのような状況なのではないか。働くことを走ることに例えるなら、以前は中距離競走でよかったのに、人生100年時代の今は長距離競走。バランスのとれた走り方をしないと、ランナーズハイでは完走できない」と指摘している。


いま審議中の働き方改革法案では、平均残業時間を月60時間以内に義務付ける方針になっているようです。これは残業が月60時間を超えると、脳心臓血管系疾患などの健康リスクが増加することが主な理由です。一方、本研究では残業時間が長い方が幸福度が高まる、という結果が得られています。これはどのように解釈すべきでしょうか?

一つの可能性として、記事で紹介されているように「長時間労働が続くことで判断力が低下し、幸福度を正確に把握できなくなっている」のかもしれません。ただ、私が多数の企業で長時間労働者面接を行なってきた実感としては、「人によって労働時間に対する感受性が大きく違う」ことが本結果の主因ではないかと感じます。

具体例を挙げると、長時間残業による疲労からメンタル不調をきたす従業員がいる一方、「自宅に帰るより会社にいる方が気が休まる」と言って用事がなくても週末に出社する従業員も一定数います。このような労働時間に対する認知の個人差が、一見矛盾する研究結果につながっているのではないでしょうか。

もちろん長時間労働が平気な従業員であっても、気がつかないうちに心身の疲労が蓄積する場合はありますし、周囲への悪影響も考慮して残業時間を制限する必要があります。ただ、長時間労働は職場に関連するストレス因子の一つに過ぎませんし、働き方改革で在宅勤務やテレワークが一般化すれば、必然的に労働時間管理のみで従業員の健康を守ることは難しくなります。「労務管理=長時間労働対策」といった極端な思考からはそろそろ卒業し、働き方改革に加えて職場のコミュニケーションやエンゲージメントの改善などを通じた、包括的な健康対策を考えるべきフェイズにきているのではないかと思います。

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