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東京銀座の産業医事務所 セントラルメディカルサポート

Column記事

2016.06.17

職場環境とストレス〜エビデンスに基づいた理解を〜

勤労者のメンタル不調は決して稀ではありません。2013年の労働安全衛生調査(実態調査)では、事業所規模別にみた勤労者のメンタルヘルス不調による1か月以上の休職者数の分布が示されています。それによると1000人以上の事業所では10人以上の休職者がいる事業場が半数を超えていたそうです。また500~999人規模の事業場では半数以上の事業場で3人以上の休職者がおり、300~499人規模の事業場の約半数で2人以上の休職者がいました。さらに、約10人に1人が、過去1年間に何らかの精神疾患を経験したという調査結果もあります。
ところで、仕事とメンタル不調はどのように関連するのでしょうか。以下でエビデンス(科学的知見)に基づいた「職場環境におけるメンタル不調の原因となりえる要素」を挙げたいと思います。

引用:川上憲人:勤労者における精神疾患の疫学―頻度と仕事関連要因 日医雑誌144(12):2437-2441, 2016

①仕事の要求度―コントロールモデル:仕事の要求度が高く、かつその仕事のコントロール(裁量権や自由度)が低い状況は「高ストレイン群」と呼ばれますが、この状況ではうつ病など心の健康問題のリスクが高くなることが報告されています。

②努力―報酬不均衡モデル:仕事上の努力が高く、一方で報酬が低い場合、うつ病のリスクが高くなります。ここでの報酬とは、給与だけでなく、将来の見込みや、周囲の人たちからの評価も含まれます。

③職場の社会支援:職場の上司や同僚からの支援が低いと感じている場合、そうでない場合と比べて、うつ病のリスクが高くなることが報告されています。

④組織の公平性:組織での評価や処遇に関する公平性、また上司が部下に接する際の公平性が低いと感じている場合、うつ病のリスクが高くなることが報告されています。

⑤職場の信頼・規範・ネットワーク:いわゆるソーシャルキャピタルと呼ばれる、職場組織での助け合いや一体感といったもので、ソーシャルキャピタルが低い場合、うつ病のリスクが高くなることが報告されています。

⑥労働時間:長時間労働者でメンタル不調が起こりやすいとする報告と、そうではないとする報告があり、一貫した結果は得られていません。ただし精神疾患の労災認定では長時間労働の有無が重要な判断要素になります。

⑦パワハラ:職場でのパワーハラスメント・いじめなどがあると、パワーハラスメント・いじめなどがない場合と比べて、心理的ストレスや抑うつ状態に陥るリスクが、男女とも8倍強であることが報告されています。なおPTSD症状の発症リスクが約11倍、うつ病の発症リスクが1.7~4.2倍との結果も報告されています。

近年このような産業医学での知見を、職場のメンタルヘルス対策に活かそうとする動きが広まっています。例えば昨年11月から義務化されたストレスチェックでも、本人のメンタル面での負担度を確認する項目のほかに仕事の裁量権や職場の上司や同僚の支援などを問う項目が含まれています。従業員に対してセルフケアを求めるだけではなく、職場全体でストレスが生じにくい環境を作ることができれば、メンタルヘルス対策として大きな成果が期待できます。エビデンスに基づいた対応を行うことで働く人々のメンタルヘルスを改善していきましょう!

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