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東京銀座の産業医事務所 セントラルメディカルサポート

Column記事

2019.05.24

人々の行動を変えるのは.2 (ソーシャルネットワークの影響)

4月23日のコラム「人々の行動を変えるのは.1 (行動変容をもたらすものは)」では、行動変容を生じさせるには行動の背景にある考えや信念に働きかけるよりも、「周囲がそうしている・そう考えている」という同調圧力を用いたネットワーク介入が有効であったという研究を紹介しました。今回は、ネットワーク介入の効果がソーシャルネットワークの構造に影響を受けうる可能性を示した小学校での研究事例をご紹介します。 

Proestakis(2018)は、身体活動量を行動変容の推定値と見做し、ソーシャルネットワークの影響を受けて前思春期の男女の身体活動量がどのように変化するかを調べました。具体的な実験内容は次の通りです。個人が得られる報酬が「自分と2人の友人の合計の身体活動量で決まり、自分を含む3人が同じ額の報酬を受ける」ケース、「自分を含む、クラス全体の合計身体活動量で決まる」ケース、「身体活動量に関係なくランダムに決まる」ケース、これら3つのケースでの身体活動量の変化を比較しました。コントロール(比較のための基準)として用いた「身体活動に関係なくランダムに決まる」ケースと比較では、身体活動量の変化に応じて報酬が決まる2つのケースで有意に身体活動量は増加 (+51.8%)していました。しかし、ここで面白い結果が得られたのです。女性では、「自分と2人の友人の合計の身体活動量で決まり、自分を含む3人が同じ額の報酬を受ける」互恵的な報酬スキームにおいて身体活動量は最も増加(76.4%)、男性では「自分を含む、クラス全体の合計身体活動量で決まる」集合的な報酬スキームで身体活動量は最も増加(131.5%)していたのです。Proestakisらは、この結果を性別に応じたソーシャルネットワークの違いにあるものと考えています。
ネットワーク介入を行う際には、対象とする個人が属するソーシャルネットワークについて、その特性を把握することが介入効果を上げるのに重要なことを示唆する研究を紹介しました。行動変容を起こしたい相手、あるいは自分が属する組織や集団のソーシャルネットワークにはどのような特徴があるでしょうか。


参考文献:Proestakis A, di Sorrentino EP, Brown HE et al. : Antonios Proestakis et al. : Network interventions for changing physical activity behaviour in preadolescents. Nat Hum Behav. 2018 Oct;2(10):778-787.

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